蔵書回廊

遅読家による感想ブログ。

『コンビニ人間』感想

一言で言うならば

 

普通という名の宗教

感想を書く前に

さて2年ぶりの更新となった。

実はこの2年の間、ブログ更新を担っていたノートパソコンがまともに動かなくなり、ブログ更新の意欲がだいぶ削がれていた。

ブラウザが立ち上がるのに5分、1文字打つのに10秒ほどラグがあるとかダメだろ……。

そしてその間にも子供が産まれたり引っ越しをしたりして生活が激変していたが、この度パソコンを購入しなおしたので、めでたくブログ再開と相成った。

この記事は2年前に貯めていた下書きを推敲したものだが、この2年の間に読んだ本についてもまた感想を書いていきたい。

 

コンビニ人間とは?

タイトルを読んだ時の印象は「コンビニ店員として従事するうちに、スキルと引き換えに個性がなくなっていくことを自覚して、それに抗う話かな?」と思っていた。

 

全く違った。

正確には全く違ったということもないが、どちらかというと『コンビニ店員として従事することで、異質さを紛らわせている人の話』だった。

(まあ、紛らわせている”つもり”だったのだが)



何が怖いって、全くと言っていいほど感情を露わにする場面が無かったことだ。

自分や他人に興味がないのかと思うくらいに。

コンビニ店員としての睡眠を妨害されかけたときにイライラしたのが唯一といっていいくらいの怒りの感情だった。

共感性が低く、合理性を重視して動くあたり、(安っぽい表現になるが)サイコパスを彷彿とさせる主人公だった。

 

普通と異常の中間点、白羽

そしてもう一人のメインキャラの白羽。

裏表紙の文章からキーマンであろう人物だが、これまた予想以上に個性的な人間であった。

俺の第一印象はもう「こいつ嫌い」だった。

匿名掲示板で女性叩きやレスバしている連中と同じニオイを感じる……。

しかし古倉さんよりかは『普通』とのズレが少ない人物でもあった。

一般的な感性を持ちつつも、一般社会に馴染めなかった故のあの性格・価値観とも思える。

終盤の古倉さんと妹さんとのトラブルを上手く治めたのも、そういう感性を持っていたからだろう。

この白羽はこの世界の在り方に疑問を持っているのだが、「川になじめなかった魚だけが、その水について考え続ける」という言葉を思い出した。

主人公はこの世界に疑問を抱きつつも、それに抗おうとも迎合しようともしないので、その意味でも中間地点のような存在だと思った。

 

宗教的な表現

そして作中、ところどころ見受けられたのが

「外から人が入ってくるチャイム音が、教会の鐘の音に聞こえる」(P.36)

「まるで教会で神父さんに出会った信者みたいな顔で~」(P.132)

「私はコンビニからの天啓を伝達しているだけなのだった」(P.157)

といった宗教を彷彿とさせる表現。

恐らく"普通"も"コンビニ"も、宗教的な側面を持っているからだろう。

"普通"はオスとメスが番い、オスは家族を支えてメスは子供を出産するのが正義とされている。

"コンビニ"はマニュアルに従い、声を出してお客様に挨拶をし、商品を配置し、売り上げを伸ばすことが正義とされている。

"普通"の感性を持ち得ず、その価値観に馴染めない主人公だったが、マニュアルという明文化された教典がある"コンビニ"では、その世界の構成員になることができた。

 

"普通"の視点

この話、終始古倉さん視点で描かれていたが、店長視点や妹さん視点での話も見てみたいと思った。

例えば店長なんかは、序盤で古倉さんとコンビニについて会話を交わしている時も

「18年もコンビニでアルバイトしている訳の分からない生き物で、正直どう扱っていいか分からない」

「けど模範的な店員として働いてくれてるし、今のところ問題行動もないから、大っぴらに口にするのも憚られる」

「そして、なぜかコンビニの話題についてイキイキと話しているし、とりあえず話を合わせておくか」

的な心情があったのかも知れない。

だが、"普通"に一石を投じるこの作品で、そういう普通が描かれることはないのだろうとも思う。

【8/31閉店】高坂書店さんとダイハン書房さんに行ってきました

出版業界の不況で、相次ぐ書店の閉店。

書店大好き人間としては非常に悲しいことである。

最近では閉店する書店の情報が手に入ると、可能な限り足を運んでいるのだ。

 

今回足を運んだのは2店舗。

大阪市天王寺区にある『高坂書店』

兵庫県尼崎市にある『ダイハン書房』だ。

きっかけになったネットニュースはこちら。

higashinari-ikuno.goguynet.jp

 

www.yomiuri.co.jp

 

今回2店舗に足を運ぶにあたり、使用したものがある。

青春18きっぷだ。

長期休暇の間販売されるチケットであり、JRであれば5日(5回)乗り放題の日を作れる。

今回は青春18きっぷを使い、名古屋〜大阪府兵庫県を普通電車で行くことにした。

 

名古屋~大阪までの運行ルート

運行ルートは以下の通り。

『名古屋 → 大垣 → 米原 → 大阪』

『名古屋〜大垣』間が約35分。

『大垣〜米原』間が約35分。

米原〜大阪』間が約1時間半〜2時間。

 

つまり片道約3時間の旅である。

(新幹線なら1時間程度だ)

ここに乗り換え時の待ち時間や、大阪から書店までの移動時間も加算される。

本当に時間があるときにしか出来ない旅である……。

 

実際に行ってみた

まずは大垣へ。

時間帯によっては名古屋から直接米原まで行けるが、自分が出発した時刻では大垣で乗り換える必要があった。

続いて米原へ。

車窓からはのどかな風景が見える。

景色を見たり、積み本を消化しているうちに米原に到着。

ここまで長かったが、ここからさらに長いのだ。

なにせ直近の大阪行きの電車が各駅停車しかなく、2時間乗る必要がある。

座ることができて本当に良かった。

というかガラガラだった。

流れる緑の風景が時を忘れさせてくれる。

だが、この時すでに限界に近かった

猛烈な身体のだるさが身体を襲ってきた。

さすがに名古屋から2時間ほぼ揺られっぱなしで、ジャブのように疲労が蓄積されたのだろう。

このとき12時半。

エコノミークラス症候群の予防と、昼食を取るべく向日町駅で途中下車した。

何度でも途中下車できるのも青春18きっぷの強みだ。

 

いざWonderlandへ

向日町駅で降りたのには理由がある。

ランチを取れる場所がないか地図アプリで調べていたところ、興味深いお店を発見した。

www.wonderland1995.com

 

カフェが併設されている本屋である。

今回の旅の目的を考えると、これ以上ないくらいの場所である。

立ち寄る本屋さんが2店舗から3店舗に増えた、素晴らしい。

早速Wonderlandさんへ向かった。

 

店内は入って右側手前が絵本売り場、左側から奥に向かってがカフェになっていた。

絵本だけでなく、文庫本も少数ながら揃えてあった。

本は後でじっくり選ぶとして、ひとまずナポリタンを頼んだ。

店員さんも気さくな人だった。

今日の旅の目的や書店全体の不況について、オススメの本屋さんなど色々な話をした。

本は『小公女』を購入し、旅を再開した。

 

大阪の地

1時間ほど揺られ、大阪に辿り着いた。

だがここはまだゴールではない。

電車を乗り換え、鶴橋駅へ。

今回の目的の一つ、高坂書店へと向かう。

薄暗い高架下に目的の書店はあった。

小さいながらも雑誌や単行本、コミックまで一通り揃っている。

アングラな本のコーナーが広く感じたのは気のせいだろう。

ついでに鶴橋の商店街を軽く見て回った。

闇市なだけあり、いかにもな雰囲気の商店街は、非日常を感じられてワクワクした。

今度時間のある時にゆっくり見て回りたい。

 

大阪に戻り、次の目的地であるダイハン書房へ。

ここはJRでは行けない為、阪急神戸線に乗り園田駅へ向かう。

ダイハン書房は町の本屋さんといった趣の場所だった。

哲学系の本を購入しようと思ったが、ピンと来るものが無かったため、短編集の『11文字の檻』を購入した。

 

帰り際、ついでに阪急限定のちいかわグッズを購入。

平日なのにめちゃくちゃ並んでいた。

 

という訳で、今回は8/31閉店の書店へと足を運んだ。

もう閉店まであと僅かだが、気になる人は行ってみては如何だろうか。

 

『最後のトリック』感想

一言で言うならば

読む前科一犯

 

まずこの本に惹かれた部分は「読者が犯人」という部分だった。

自分はミステリーを数多く読んではいない(そもそも本をそこまで読めていない)が、ジャンルとしては好きな部類だ。

その「読者が犯人」という無理難題をどう小説の中で描写するのか。

そこが気になり、この本を手に取った。

 

あらすじは割愛するが、本書を読み進めてまず思ったのが、固定化されているシーンだった。

・仕事場のマンション

・古瀬博士の研究所

・有馬との飲み

・家庭での会話

登場するシーンは以上の4つのみ。

ローテーションが崩れることはあれど、新しい舞台が登場することはなく、終盤に入るまでこの4つで回っていた。

自分はこの固定化されたシーンに何か意味があると思い、

「実はいくつかの場面では、主人公以外の人物の独白という叙述トリックでは?」

「これらの場面は裏で繋がっていて、伏線になっているのでは?」

と色々とパターンを考えていた。

中盤辺りで発覚するが、これはある意味主人公が日常を過ごしていることを描写していた意図があるように思う。

 

また、「主人公以外の独白ではないか?」と思ったのにももう一つ理由がある。

主人公の情報があまりにも少ないからだ。

例えば本作では主人公の名前が一貫して出てこない。

明らかに意図的に隠しており、一人称視点でしか判断できないので、そこでの誤認を狙っているのではないかと疑っていた。

もちろんこの『名前を意図的に隠している』のにも理由があった。

 

そして中盤辺りで発覚する事実として、『この作品は作中の登場人物も読んでいる』という事実。

なるほど、これで合点がいった。

保険勧誘員が有馬のことを知っていたのは作中でも解説されていたが、読者的には「読者が犯人」というトリックを成立させるための下準備がこれなのだと納得させられた。

また本筋とは関係ないが、主人公の「手紙の内容や周りの人の反応を小説として紙面に掲載する」行為は、媒体が違うだけでYouTuberと似ているなと思った。

行為の是非はともかく、動画上で手紙の中身を公開し、他人の反応や訪問者を撮影して動画にアップロードしているのと変わらないなと。

(むしろカメラがない分、他の人が気をつけにくいから厄介度は上)

本書は2007年に書かれたらしいが、2023年にも通用する内容が書かれてるのは個人的にかなり感心した。

 

そして終盤。

「読者が犯人」のトリックが手記を通じて明かされる。

なるほど、主人公は読み手ではなく『共犯者』だったのか。

そして他にも気づいた点がいくつかあった。

まず主人公が有馬に覚書を見せなかった理由として「舌鋒鋭く批判眼の発達した有馬の目に触れさせたくない」と述べているが、あれは比喩表現ではなく、ある意味で言葉通りの意味だった。

そして序盤に夫婦との会話で出てきた『対人恐怖症になったヒデ坊』の話や、有馬が小説家を志さなかった理由の『文章とは自分の身体の延長であって(中略)貶されるとズキズキと痛い』もある意味で伏線だった訳だ。

 

最後に主人公は読者に対してある語りがけを行う。

有り体に言えば「あなたが犯人だ」「香坂誠一を殺したのはあなただ」と言われる類のものであるが、覚書を通して香坂誠一の経歴や動機がしっかり伝えられたためか、不愉快だとは思わなかった。

(もし香坂誠一について描写が不足していて、彼に感情移入できなければもう少し違った感想になっていただろう)

まあ、その覚書が香坂誠一を殺す凶器なのだが。

 

個人的には死亡後に届いた手紙の中に書かれていた、一番最後の独白が好きだ。

「夜が明ければ自分は死ぬ」という避けようのない死を自覚しつつも、その夜を過ごすしかないという彼の恐怖と絶望は、如何ほどだったのだろうか。

 

『チルドレン』感想

一言で言うならば

 

日常、波乱、日常、奇跡

 

『短編集のふりをした長編小説』でも良かったけど、このキャッチコピーは解説でも使われていたので…。

 

春読!?もう冬だぞ……

 

本作をざっくり説明すると、陣内という破天荒な男性の周りで起こる、ちょっとした事件や出来事を5編に渡って描いたお話。

こう書くと陣内が主人公に思えるが、陣内が主人公を務める話はなく、それぞれのお話で語り部(主人公)は異なる。

一応、オムニバス形式に該当する……のかな?

 

【バンク】

陣内含むメインキャラ3人が銀行強盗に遭遇する話。

陣内の奇人変人さと、永瀬の安楽椅子探偵の片鱗が見える回。

語り部を務める鴨居がいい感じの狂言回しをしてくれる。

後になって分かるが、この編でも陣内の突飛な行動がいい結果を残しているのだ。

 

【チルドレン】

バンクから12年後、家裁調査官になった陣内の後輩、武藤が語り部の編。

この編は家裁調査官を題材にした軽いミステリーといった趣の回。

解説にもあった通り、真正面から描けばシリアスな調査サスペンスになる題材だが、陣内を始めとする一筋縄では行かない登場人物や、彼らに翻弄される武藤の心情を描くことで、雰囲気の緩和に成功していると思われる。

武藤についても、きちんと調査官としての矜持を描くことを忘れていない。

あと要所要所で陣内の奇人さと知性の高さの両方を窺える。

 

【レトリーバー】

再び学生時代に戻り、語り部は優子にバトンタッチされる。

この編は日常のミステリーといった感じ。話を引っ掻き回す陣内と、安楽椅子探偵の永瀬が存分に楽しめる。

そして何気に陣内が吹っ切れた出来事の伏線が張られている。

 

【チルドレンⅡ】

再び武藤を語り部とした家裁調査官の回。

今回は武藤というより、陣内含む周囲の人間に重きが置かれている。

一見無関係な二つの人間関係が一つに絡みついていくのは、個人的には好きな展開。

そしてラストはこの小説のクライマックスと呼べる展開を迎える。

陣内や武藤の言う「奇跡」を体感することができる。

 

【イン】

今回は永瀬が主役の回。

彼の視点を通して、彼が見ている世界を体験することが出来る。

彼の視点を利用した叙述トリックもあり、日常のミステリーといった感じの話。

とはいえ、この回は永瀬の落ち着いた性格もあって割と平和に進む。

トリを飾るのにふさわしい、さわやかな読後感のある後日談といった話。

 

【その他】

全編を通して共通したテーマがあるように思えた。

タイトルの『チルドレン』の通りなのか、大小問わず悪事を働く子供が全編に出てくる。

家裁調査官が主人公のチルドレンは当然として、レトリーバーやインにも登場する。

彼らを諫めるのが決まって陣内か永瀬というのも面白い。

伊坂幸太郎作品は初めてだが、これからも読んでいきたいと思える作品だった。

 

(あと解説を読む限り、様々なオマージュが散りばめられているそうだが、不勉強ゆえに何一つ分からなかったのだ)

『犬神家の一族』感想

一言で言うならば

 

お前はもう、もう逆さ足を笑えない

読んだことがない人でも知っているであろう、池から突き出た逆さ足。

インパクト大の超有名シーンですね。

かなりコミカルな絵面ですが、きちんと意味を持っていたのが面白い。

しかも背景を知るともう笑うことはできない。

少なくとも俺は笑えない。

静馬が犬神家に復讐を誓いつつも、最後の一線を守った結果なのだから。

 

作品全体の感想を言うと、シンプルに面白い。

このシンプルというのは突飛な設定がないという意味。

よくありがちな遺産相続モノだと、当主が残した謎を解け!みたいなものがあるけど、

犬神家には珠世に主導権を握らせつつ、零れた分は静馬に与えられるという点以外は現実的な遺言書だ。

だがその点だけで面白く話が展開していくのだから凄い。

「そんな遺言書で大丈夫か?」と思っていたけど普通に大丈夫だった。バンバン事件起こるし、ブクブク謎が膨らんでいく。

(しかも後々遺言書の意図が明らかになるという)

ミステリ界の金字塔と帯に謳われているだけあるね。

 

あと佐清(本物)と佐清(静馬)で行動に若干違いがあるのいいよね。

例えば珠世が兵隊服の男に襲われたとき、悲鳴を聞いた佐清(本物)が真っ先に飛び出したりとか。

逆に佐清(本物)の悲鳴を聞いたとき、珠世が急いで向かおうとしていたり。

二人の関係性を知った後にこのシーンを見返すと……いいよね……ちゃんとお互い大切に想ってるんだね……。

 

ちなみに地味に好きなシーンは、悲しき放浪者の章で佐清が絶望を抱いて東京を放浪していたと語るシーン。

死体遺棄の片棒を担がされ、地位も名前も恋人も奪われ、あてもなく東京を放浪していた佐清の心情を思うと、胸が締め付けられる。

もしかしたら、自分は短くも人の絶望を感じられるシーンに惹かれるのかもしれない。

『異端の祝祭』感想

一言で言うならば

 

カルト民俗学ホラー、のち異能力バトル

 

 

全体の感想を書く前に、記憶の整理も兼ねて登場人物についての感想から。

 

【登場人物について】

・島本笑美

序盤の主人公。主に彼女を通してヤンとモリヤ施設の異常性を知ることになる。

能力は異性への魅了かな?

青山から「かなりの美人」と評される、水商売で誰一人笑美に手を出さない、不良であるはずの山池先輩から目をかけてもらえる…等

(兄に関しては兄側の素養の問題だろう)

彼女は依存するタイプだが、その中でも男に染まるタイプだろう。

兄を慕っていた頃は兄が世話をしてくれていると信じていたし、ヤンに心酔したときにはヤンこそが救世主と信じて疑わなかった。男の目的を自分の目的にしてしまうのもそうだろう。

(そして依存先が入れ替わったからか兄の異常さを自覚するのだった)

 

・島本陽太

彼視点のモリヤ施設潜入はかなり面白かった。笑美とは別の視点、一般人視点からの施設の異常さが伝わってきたので。もっと見たかったのが正直なところ。

本性については言うに及ばず。

笑美視点でたまに聞こえていた冷たい声も、幼少期に刷り込まれた陽太の囁きなんだろうなぁ…。

猫を被るのが上手そうなので、モリヤ施設潜入も都合の悪いところは変えて話してた可能性もある(特に岡田への扱いとか)

正直「あまてなたるべし」された方が良かった類の人種(小声)

 

・佐々木るみ

本作の主人公兼ヒロイン。

街中の変人と思ったら異常者(褒め言葉)だった。

青山のお爺さんを巻き込んだ事件とか、物部との出会いとか、「母」については別の小説で語られるのかな…?

余談だが、終盤の展開がTwitterの感想で「領域展開」とか言われてて笑った。

 

・青山幸喜

もう一人の主人公兼狂言回し。作中貴重な常識人。

本人は特殊能力を持たない一般人だが、それ故にるみや物部に気に入られているフシがある。

本人は無力感を嘆いているが、ヤンを単身退けたのは凄いよ。

 

・石神

かませにされた霊能者のおじさん。

るみが嫌う理由の「善意のみで動くから」は何となく分かる気がする。

石神が笑美に渡したと思われる”お守り”も、猛烈な吐き気がこみ上げるアレか、兄の罵声が聞こえるアレのどちらかだと思う。

そしてどちらも笑美を不快にさせていて、石神はそれを”良かれと思って”やっているという質の悪さ。

宗教にハマった人特有の善意とも言えるかな。中盤のヤンの”教育”とある意味で同じ。

 

・物部

土佐弁だー!(以蔵さんで履修した)

常識人その2。彼もたぶん石神に嫌悪感を示すタイプだと思う。

こっちのルールを相手に押し付けるという割とチートな能力だが、彼が四肢を失った話もいずれ出てくるのだろうか。

 

・ヤン

いわゆるラスボス。

個人的には彼のような警戒心を持てない敵だとか、眼窩女のような化け物を神性の存在として扱っているのとかすごい好き。

特にクリスマスの由来を語る独白のシーンは異常な風習を”常識”として、カルト扱いする友人を”洗脳された存在”として素で思っているのがいい。

(康平や慶次のあの後を考えたら凄く憂鬱だが。特に洗脳されて家に帰された場合、宗教系の家系である彼らの家族の心情を考えると…)

カルト教団が本物の力と信仰心を手に入れたらどうなるか」のいい例だと思う。

 

【物語の感想】

ねっとりとした民俗学ホラーのキャッチコピーは伊達じゃないと思った。

諏訪神社ミシャグジ信仰の下りは民俗学ホラー、後半の聖書発覚のあとは異能力バトルと展開が変わったが、これはこれで面白かった。

序盤は割とローペースだったが、陽太のカルト施設潜入辺りから引き込まれていってあっという間に読了。

蘆花公園さんの作品をもっと読みたいと思わせてくれる一冊でした。

無いなら作ればいい

昔から、ドラマや漫画・小説を読んだ後、他の人の感想を読むのが好きだった。

自分の感情と一致したり、自分にはない知見や考察を見れてとても面白いからだ。

ドラマ『相棒』をよく見ていた時は、感想ブログを読むまでがセットだった。

 

アフィリエイトブログが流行って数年。

世の中には感想ブログの顔をした、『あらすじブログ』が出現し始めた。

単に物語のあらすじを書き連ねただけの中身のないブログだ。

誰にもでも書けるし、質も量も大したことない。

何なら記事の前後にベタベタと貼り付けた広告スペースの方が広いまである。

この手のブログに当たるとひどく落胆する。

 

感想は確かにアマゾンレビューなんかにも書いてあるが、あくまでも商品に対するレビューなので、深い話は書かれていない。

ドラマを見た後、小説を読み終えた後、その余韻が残っているうちに想いを余すところなく書き記したブログ。

そういった感想ブログが、ない。

 

無いなら作ればいい。

 

その思いでこのブログを立ち上げた。

いつまで続くかは分からないけど、もし自分と同じ気持ちを味わった人がこのブログに辿り着き、”感想”に対する飢えを満たして頂けたなら本望だ。